超広角レンズのフラット画像


シグマの超広角レンズ8-16mmを使い始めたのですが、このレンズには周辺減光があります。超広角は周辺画像が広がることを考えれば周辺減光は有って当然ですが、何とか補正したくなります。もちろんステライメージなどで簡易補正をする事も出来ますが、ベイヤー配列でフラット補正を行った方が先の画像処理が有利になることは間違いありません。問題は超広角レンズのフラット画像を作製することです。スカイフラットにしろ、ELパネルにしろ上手く平坦な光源を手に入れることは非常に困難です。挑戦したことがある方ならなぜ難しいのかお分かりいただけると思います。

そこで今回、発泡スチロール製の半球を使って、超広角レンズのフラット画像を作製を試みました。
まだいい加減なテストですが、この方法に可能性があることを示す結果が得られたのでまとめてみます(2010.10.13)。

2010.12.25 RGBフラット合成について

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 左が今回作製したフラット画像を使ってベイヤー配列時にフラット補正を行った画像、右はフラット補正無しです。違いがお分かりいただけるでしょうか。画像の上部隅を比較するとフラット補正の効果があることが分かると思います。

撮影条件はノーマルEOS40D、SIGMA 8-16mm(8mm F4.5) ISO800、露出2分です。

使用したフラット画像はこれからご紹介する「超広角レンズ専用フラット撮影装置」で撮影した画像です。
使用したフラット画像と、この画像のRGB分解画像の強調疑似3D画像です。

フラット画像の周辺減光は滑らかな曲線を描いていて、不自然な凹凸や揺らぎは見られません。実際に均一なスカイフラット画像と比較することが出来ないので、本当に正しいフラットと言い切ることは出来ませんが、とりあえず撮影装置によって得られたフラットは自然な周辺減光を持っている事がお分かりいただけると思います。 

ちなみにAPS-Cサイズで焦点距離8mmのカメラレンズを使った場合、均一なスカイフラットを撮影するためにはほぼ全天が均一である必要があります。曇天フラットでも雲の向こうに太陽が無く、日の出前でも東が明るくない、夜間に時間をかけて撮影するにしても全周に光害の無く、天の川も見えない空が必要になります。

ELパネルを使って撮影するためにはレンズをパネルに近づけると減光シートが写ってしまうので、ある程度離す必要があり巨大なELパネルが必要になってしまいます。
そこで今回使用した発泡スチロール製の半球です。直径約30cmです。最初は透過光を利用しようと思ったのですが、発泡スチロールは素材が均一でないため透過光は均一になりません。また、超広角レンズはレンズから10cm程度でもある程度ピントが出てしまうので透過光の不均一性が目立ってしまいます。

そこで反射光を使うことにしたのですが、光源をどのように作るのかかなり悩みました。

そんなとき胎内星祭りで売っていたELワイヤーを思い出したのです。 
インバータの電源は単三2本、それほど強い光を出すものではなく、手で簡単に曲げて整形することが出来ます。これを真ん中に穴を開けた白い段ボールにクルクルととぐろを巻くように貼り付けます(試しなのでセロテープべたべたで済みません)。 

 
真ん中の穴からレンズを出します。花形フードがしっかりELワイヤーより前に出るようにしますが、レンズ先端が出過ぎると陰の原因になります。 
こんな感じです。 
後は半球の中心とレンズの中心が一致するように気を付けて撮影します。撮影は当然暗い所で行います。ドーナツ状の色画用紙などをELワイヤーに被せることで、色調補正も可能です。

半球にアルミホイルを付けているのは周囲を暗くしても、内部から光が透過してくるため、手で持ったり、床に置いたりすることで半球内の反射にムラが生じるためです。

「もっと綺麗に貼れ!」って聞こえてきそうですが、あくまで実験用プロトタイプなのでご容赦を・・・
   どうです?

ちょっと良いアイデアだと思いませんか?

超広角レンズのフラットでお悩みの方は是非試してみて下さい。発泡スチロールの半球はホームセンタ、ELワイヤーは星祭りに出ていたこのお店等で調達出来ます。半球が意外に高いので製作費は6,7千円程度になると思います。

改良点としては
・半球をもう少し大きな物にした方が、レンズ先端の影の影響が出にくいと思います。
・素材ももっと平坦で均一な反射率の物が良いと思いますが、光沢があると上手く行かないと思います
・ELワイヤーを貼り付ける白板に一工夫欲しいですね。もっと使いやすく出来ませんかね。
 
 2010.12.25 RGBフラット合成について


ここまでの試用で、超広角レンズ用のフラット画像を撮影するための半球は予想以上の実用性を持っていることが分かりました。
最大の問題は真ん中に穴があいている光源部分で色を合わせるのが非常に面倒くさいと言うことです。また、これまでのテストでは、色合わせをしなくてすむRAP2を使ってフラットをRGB合成すると若干過補正になることや、LPS-V3FFを使った画像ではフラットダークを減算すると補正に失敗することも悩ましい点でした。加えてDNGファイルは私の技術ではいじりようが無いのもストレスです。

そこで、RAP2のRGB合成と同じ機能のソフトを作製しました。以前作ったピタットは周辺減光が少ない画像ではノイズが増すだけで有効に機能しません。そこで状況に応じて2つのソフトを使い分けられた方が便利と思い、SSProにも対応させました。このソフトが優れている点は、ピタット同様、作ったフラット画像と実際の撮影画像を任意のX,Y断面で重ね合わせて適合性を評価できる点です。RAPのように補正その物を行う機能はありませんし、16bit整数のFits形式にしか対応していないので、中途半端なんですがSI6と組み合わせるとフラット補正は予想通りの結果になるので便利です。ついでにヒストグラムを表示する機能を作りました。1度に4つのファイルを分析できるので重宝します。
 


フラット補正なし

フラット補正あり
超広角とは言っても16mmで、ガイド鏡が写ってしまったので北側を少しトリミングしてあります。

SI6でディベイヤー、コンポジット、デジタル現像、カブリ補正を行った状態での比較です。F5.6なのでもともと周辺減光は少ないのですが、正確なフラット補正の効果は、天の川の構造がクッキリしていることで何となく分かると思います。 

この程度なら必要ないという意見もあるでしょうが、これほど良い空は滅多にないので普段はもう少し有難味があると思います。

ヒストグラムは上からR,G,B,撮影画像の順になっています。それぞれの段で白い背景のヒストグラムの部分が合成されることになります。

上の画像を補正するために撮影したフラット画像から、実際にRGB合成してみました。撮影したフラットの色調はヒストグラムで青が大きな値となっていることからも分かるように、かなり青いですが、RGB別々に明るさだけ合わせれば良いので作るのは簡単です。合わせる目安となるヒストグラムと平均値ですが、今回のフラット画像ではヒストグラムのピークと平均値が比較的合っているようです。

RAP2では何故か上手く行かないフラットのダーク補正ですが、このソフトとSI6を組み合わせた場合には補正はすることはできました。しかし、行わない方が出来上がった画像のレンジ幅が損なわれませんでした。理由はよく分かりませんが、フラットの平均値が千数百なのに、フラットダークの平均が千以上あるのが原因だと思います。

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