Bフラット補正

2009.10.10 私はほんの数年前まで、フラット補正はフォトショップのグラデーションマスクや、ぼかし画像を減算して行っていました。正確なフラット画像を撮影しベイヤー配列時に補正を行うようになったのはごく最近のことです。
フラット補正のダーク減算についても、我流処理に書いたように基本的知識が不足していました。そんな私がフラット補正について語るのですから、たかが知れています。逆に分からないから色々試していると、瓢箪から駒って事があるかも知れません。


2013.1.29 ステライメージ7にガンマフラット補正が搭載されるという事を知り、当時の画像処理を読み返してみました。お恥ずかしい事に、書いた本人でも分かりにくい部分があったので、赤字で加筆します。当時上坂氏のガンマフラット補正の記事を読んでいなければこのページは造らなかったと思います。書いてある内容はガンマフラット補正とは関係ないのですが、フラット画像の根本はこの時理解したつもりですし、自作ソフトにも若干取り入れています。
モノクロCCDを使うようになってからは、カラーCCDほど面倒なフラットフレーム作りは必要ないので楽になりましたが、今でもカラーCCDやデジタル一眼は使っているので必要な知識です。


2010.9.26 追記へ

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 はじめに

ベイヤー配列
 
これは私がStarShootProのフラット補正で実際に使っているフラット画像です。これからフラット補正をやってみようという方が一番迷うのが、フラット画像の明るさだと思います。ところが明るさは結構いい加減でも補正は可能で、大切なのはフラット画像に含まれる周辺減光のレンジ幅の中での減光曲線の形なのだとおもいます。

普段は白色ELパネルにカラーシートで色調補正と減光を施して、10秒露出で撮影しています。
と言っても、このレンジでみると真っ黒です。

※モノクロCCDを使い始めて、フラットフレームの明るさだけに限っていえば殆ど気にする事はなくなりました。そう考えるとカラーCCDは繊細で面倒なフラットフレームが必要なんですね。 
 

ベイヤー配列
 レンジを調整すると、灰色のフラットらしい画像が見えるようになります。このフラット画像では周辺減光はわずか数百のレンジしか無いのです。この画像は最近撮影した露出不足のM33で実際に使用したフラット画像です。

フラット画像をどのように撮影し、どの程度のレンジ幅にするかは、勘と試行錯誤に頼る所が多く、私は今の所一般的な答えを見つけることは出来ません。鏡筒毎、撮影毎に試行錯誤で適当なフラット画像を決めているのが現状なのです。
   
2009.10.10 まずはやってみよう
この章の最初のテーマは、カラーCCDを使った撮影時のフラット補正にかぶりの影響がどのように出てくるのか?ということを明らかにする事です。 
 

モノクロ
 まず、パソコンの液晶画面に灰色のグラデーションを表示します。この画像を、miniBorg60ED+レデューサDGTでEOSKissDX改造機、ノーフィルターで撮影します。画像はRAWで保存します。この画像を使って、フラット補正について考えていこうと思います。

※撮影時のカブリをパソコンのグラデーションを使ってシミュレートしてあります。この画像を撮影しフラット補正する事でカブリがフラット補正後の画像にどのように影響するかを見ようとしています。
 

RGB変換
撮影されたRAW画像をステライメージで、ベイヤーRGB変換しました。

左が暗いので、グラデーション画像の特徴は分かりますが、中央部が青白く光学系の周辺減光が強く出ていて、撮影された画像が分かりにくくなっています。星雲の写真でもそうですね。

初心者のうちは中心部分の写りが良いくらいにしか思わないのですが、周辺部の暗さを補正しようとすると、実はこれがやっかいな周辺減光であることを知ることになるのです。

※グラデーション画面を周辺減光のある光学系で撮影した画像です。減光が大きくてカブリをイメージしたグラデーションは殆ど分かりません。

※わかりやすいようにレンジを狭めて強調画像にしてあります。
 

RGB変換
上の画像をフラット補正するために用意した、特製フラット画像です。黄色ということは、今は気にせず、確かに周辺減光があることを確認して下さい。 今回はカラーシートで故意に黄色いフラット画像を作っています。

後からこの色が重要になりますが、ここでは流して下さい。

※カラーCCDのフラット補正に使うフラットフレームはモノクロの場合には考慮する必要の無いRGBのカラーバランスが非常に重要である事を確認するためにあえてカラーバランスを崩したフラットフレームを用意してあります。
 

モノクロ
ステライメージ上で、上に示した撮影画像を、黄色いフラット画像で、ベイヤー配列のままステライメージを使ってフラット補正した画像です。補正後にベイヤーモノクロ変換しています。

明るさは異なりますが、グラデーションになっていることが分かります。

フラット補正によって、周辺減光が補正されたので、画像のグラデーションがはっきり分かるようになったということが、この効果を意味しています。

※まずはモノクロ変換した画像である程度周辺減光が改善された事を確認しています。 
 

ここまでを、グラフで見てみましょう。

まず撮影した、元のグラデーション画像です。殆ど直線的に右上がりのグラデーションです。色はグレーです。
 
撮影した画像をベイヤーRGB変換変換してした画像では、右肩上がりのグラデーションの特徴は出ていますが、お椀を伏せたような周辺減光がかなり強く出ていることが分かります。元画像はモノクロなのですが若干色がついています。

※わかりやすいようにレンジを狭めて強調画像にしてあります。
 
 フラット補正後、ベイヤーモノクロ変換し、明るさを調整した画像です。見た目にはグラデーションに見えてきました。画面中央部に見られたホコリの陰もフラット補正で綺麗になくなり、フラット画像を使った補正がいかに効果的か分かります。

しかしながら、グラフでは周辺減光が若干残っていて、補正が完全ではないことが分かります。

※フラット補正前に比べれば元のグラデーションが分かる状態になっています。ただこれはモノクロ変換してあって、グラフではフラット補正が不十分にみえる周辺の落ち込みが、カラー変換すると大きな問題になっている事が分かるという流れです。

ここから、フラット補正の話を深めていこうと思います。
   
2009.10.11 一眼デジカメで撮影した画像はカラーです。

 
先ほどの、フラット補正後の画像をカラーにしてみます。中央部分が青く、左右に赤い色が付いていますね。

撮影した画像はモノクロのグラデーションですから、この色が、フラット補正によって生じた色になります。そうなるとRGBそれぞれについてフラット補正がどのように行われているか、興味が湧いてきますね。黄色いフラット画像の仕掛けが効いてきます。 

※カラーバランスの崩れたフラットフレームの影響がカブリ画像を処理すると色むらとして現れる事を表現しています。1つ上のモノクロ画像ではこんな色むらが発生している事は分かりませんね。

※わかりやすいようにレンジを狭めて強調画像にしてあります。
もう1度撮影された画像です。RGBそれぞれの状態をグラフで示します。RGBすべて周辺減光と右上がりの特徴を示しています。

※周辺減光は凸のカーブ、グラデーションは左右の高さの違いとしてみる事ができます。画像はRGB共に同じようなレベルになっています。

※わかりやすいようにレンジを狭めて強調画像にしてあります。
 

オートでホワイトバランスが補正されてました。

RAP2でフラットのカラーバランスのまま現像
フラット補正に利用した画像です。RGBそれぞれの状態をグラフで示します。

このような色に撮影するにはどのようなカラーセロファン用紙が必要でしょうか?
いろいろな考え方があると思いますが、私は夕焼け作戦です??
(白い紙で減光させて、波長の短い青を除くということなんですけど・・・)
後は緑のシートですね。

自分で間違えたから言うわけではありませんが、フラット画像の色を確認するのは意外と面倒で、ステライメージでは現像時にオートのホワイトバランスがチェックされていて、間違ってしまいました(すみません)。上のオレンジ色の画像は実際のフラット画像より赤いです。下の画像が実際のフラット画像のカラーバランスに近いものとなっています。明るさはわかりやすいようにかなりレンジを切り詰めています。

RAP2のヒストグラムの方が量的なイメージがはっきりしますね。

※種明かし、フラット補正に使っているフラットフレームはBが非常に暗い画像を使用しています。

※わかりやすいようにレンジを狭めて強調画像にしてあります。
ベイヤー配列の状態で


この画像から


この画像を割り算する




これになる


RGBそれぞれのグラフの特徴を見ていると、一眼デジカメのフラット補正の問題点や限界が見えて来ませんか?
※Bだけが非常に暗いフラットフレームでフラット補正すると画像の補正後もBの周辺減光は完全に補正されていません。RGB別々に処理するモノクロCCDならばそれぞれの明るさに多少のバラつきがあってもBIASフレームとダークフレームさえしっかりしていれば除算は問題ないですよね。補正後にレベル調整が必要でしょうが、それはソフトの方でやってくれますし。

実はこんな話は以前から知られていて、RAP2というソフトがこの問題を解決するフラット補正を可能にしているのです。私も使って見ましたが、確かにRGBそれぞれをフラット補正できるので、まるでモノクロCCDの処理のように正確なフラット補正が可能となります。ちょっとめんどくさいですけどね。

2013.1.29この結果を見直していて、逆になぜBは凸が補正されないのか分からなくなりました。
両者からフラットダークを減算して、そのまま除算すれば値が小さいBのフラットフレームでも凸はある程度解消できるはずです。処理はステライメージなのでフラットダークは減算していると思うのですが、ひょっとして補正後のカラーバランスが大きく崩れないような処理をしていますかね。その時カブリの分が誤差になって影響しているとか?
また分からない事が出てきました。とりあえずモノクロCCDでは考える必要の無い問題だと思います。カラーCCDは悩ましい・・・



「まるでモノクロCCDのように」というところがくせ者なんですよ・・・、所詮ベイヤー配列ではモノクロCCDを超えられません。ここで話は変わります。 

※確かに使ってみるとモノクロだってそれなりにフラット補正の問題はありますが、それは別の話です。この先の話はRGBの色むらとは全く異なる周辺減光の減光量を、ELパネルを使って如何に理想的なフラットに近づけるかというような、かなり違う種類の話になってます。
   
2009.10.23 ベイヤー配列ではどうなっているのか?

撮影が忙しく、しばらくお休みしていました。
殆どの画像処理ソフトでは、カラーCCDで撮影したR, G1, G2, Bそれぞれの素子の受光量をそのまま見ることが出来ません。 ベイヤー配列画像を見ることは出来ますが、それは4素子全ての情報が入っているので、それぞれがどのようになっているのか全く分かりません。さらにフラット補正などの結果を見るときにはベイヤーRGB変換をしないと滑らかな画像にならないのでますます各色ごとの状態を観察することは難しくなってしまいます。

そこで、SSPの整数16bitFitsファイルからR,G1,G2,Bそれぞれの情報を抜き出すソフトを作りました。これがあれば、画像処理ソフトの影響を完全に排除して、各素子の値を評価できます。モノクロCCDはこんな苦労をしなくても撮影されたデータその物が、こうなっていますから有利ですね。

左は、未処理のM42の画像のデータです。XY方向は各素子5Pixelsの平均をとってその値を高さにしてあります。高さ方向は、このグラフでは、かなり強調してあるので、画面の高さは3pixelsで値は100程です(最大値は65535です)。恒星の明るい部分は邪魔なので切り捨てて表示しています。

各色とも、底面が湾曲していますが、これが周辺減光です。縦横でたわみ型に差があります。これは、本来縦2024、横3040なのですが、表示の関係で縦軸が横軸より3倍ほど長く表示されているためにたわみが少なく見えているだけです。

色によって湾曲の具合が異なることがよく分かります。それぞれの色にあったフラット画像を作製しなければならないことが分かると思います。
フラット画像を使ったフラット補正後のR画像のデータです。画像処理ではフラット補正は完璧と思っていたのですが、実際のデータでは若干補正過多になっているようです。

※補正した画像そのものや断面の形状では対象物が写っているのでフラット補正の評価は難しいです。
 
これは同じ日に撮影したM31のR画像のデータです。 縮尺はM42と同じです。

フラット補正後のデータですが補正過多、加えて右肩下がりになっていて、この段階ではカブリが残っていることが分かります。

道具の説明はこれで終わりにして、本題なんですが、私自身やっぱり良くわからない所があります・・・

※大事なのは凸の大きさ(乗算)ではなく、曲面の形なんですよね。その意味でガンマフラット補正は面白そうです。フラット補正で、明るいフラット画像でも暗いフラット画像でも同様に補正可能であるという事は曲面の下の部分(俗に下駄という部分)はフラット画像にカブリがないとすれば、0か画像の明るさに応じて変化して、曲面と下駄の比率は定数になるのです。MaxImDLやPixInsightではMasterFlatはMasterDarkなどの扱いと異なり、その下駄が付いているのですが、露出の異なる画像でも縦軸を調整すると同じ形に見えます。つまり0でなく後者の定数になっている気がします。これは意図してやっているのか普通に平均するだけでそうなるのか、面倒臭くて確かめてないです。
   
2009.10.31 フラット補正の許容量
画像処理ソフトを通さずにフラット画像とそのフラットを使った補整状態を確認してみましょう。
左は全く同じM31の画像を、非常に明るいフラット画像とかなり暗いフラット画像で補整して、同じレンジに切りつめた画像です。 

まず、フラット画像の明るさは補正に全く関係していないことが分かると思います。重要なのは周辺減光の広がり具合なのですが、ステライメージはベイヤー配列でこれを調整する機能を持っていません。MaxIm Dlでフラット画像を調整する方法を星居ブログさんが書いていましたが、SSPに附属している簡易版では出来ません。

そこで、フラット撮影時の露出時間や光源の明るさを変更して、ちょうど良い山の形をを試行錯誤で探すことになるのです。この作業はフラット画像の明るさを問題にしているのではなくその形を調整しているという所に着目しないとなかなか上手い画像を作ることが出来ません。

※ELパネルを使ったフラットフレームでは実際に撮影した画像の周辺減光と減光曲線が微妙に異なるため周辺部で補正しきれない事があると考えられます。これはカラーでもモノクロでも同じに言えることです。この曲線はフラットフレームの全ピクセルに対して定数を乗算、加算しても特性その物を変化させる事は出来ないので、星居ブログの上坂氏はフラットのガンマ補正を考案されたのだと思います。これがステライメージ7に搭載されるのでしょうか?


元のM31はこんな周辺減光です。
 
 
   上の図の解説です。

左は暗いフラット画像とそれを使ったフラット補正後のM31です。右は非常に明るいフラット画像を使った補正の結果です。当然描写しているグラフの強調程度は同じになっています。一方グラフの底面位置は平均値が10倍近く違うので実際には異なりますが、そのままでは画面に描けないので揃えてあります。

いかがですか?暗い画像でもそこそこ補正できていますし、明るすぎる画像でも若干過補正なくらいです。


フラット補正の明るさに対する許容量が非常に大きいことが分かると思います。最適なフラット画像を作るためにはこの2枚のフラット画像の中間くらいの明るさで撮影すれば、山の形が最も近くなるのかも知れません。特にひどい光害地や、特殊な条件で撮影していない限り、ヒストグラムでピークの位置が撮影した星雲画像と同じ程度になるようなフラット画像を撮影すれば山の形も同じようになるはずです。ポイントは最適な明るさを探すのではなく、明るさを変えることで最適な山の形を探す所にあります。

※フラットフレームの露出時間を変えると凸の大きさはダイレクトに変化しますが、モノクロに限ればこの変化はフラット補正の結果には影響しないみたいです。では何が影響するかというと、露出時間を増やす事で増加する筒内乱反射や周辺からの迷光のようなもので補正結果に変化がでるような曲面の変化が、たまたま得られるという事だと思います。他にも私が使っているAtik383L+の場合は露出が短いと中央部分の露光量が少ないという特性があります。

カラーCCDではフラット画像のRGBそれぞれのヒストグラムを同時に星雲画像に近づけることが困難なためにRAP2が作られたと思うのですが、山の形その物を評価する機能を持っているわけではないので、上手く行かない場合は、なかなか大変だと思います。

※、カラーCCDの場合、RGB相互関係があるので、フラットの色調と明るさ、2つの面倒な要素を抱え込んでいる事になりそうです。ガンマフラット補正はデジタル一眼の補正にも対応しているのでしょうか?

フラットを合わせるのは本当にめんどくさいです。SSPの場合RGB素子の撮影時の値はBが低めになっていることが多いです。これはBの露光量が少ないわけではなくCCDの特性だと思います。さらにLPS-V3フィルターなどを使って撮影するとRGBのバランスはさらに崩れます。勿論フラット撮影時に同じフィルターを付けて撮影すればCCDに入ってくる光の量は同じようなバランスにすることが出来るのですが、SSProに限った事かもしれませんが、ここで1つ問題があります。
 
 2009.11.5 カラーCCDならではの問題
LPS-V3を装着して撮影したフラット画像です。全体を見た感じではそれほど不自然な感じはしないと思います。
 
この画像をベイヤーRGB変換して拡大すると、緑素子の片方が極端に濃いことが分かります。この現象がLPS-V3装着時にSSPに限定して現れるものなのか、カラーCCDでは一般的に見られる現象なのか分かりません。あるいは私のELパネルとV3の相性ということも考えられます。内部処理のあるCanonなどの一眼デジカメではどうなっているのか全く分かりません。 追記:V3フィルターを使わない場合でも、極端に青い画面を撮影すると2つのG素子の値が大きく異なります。ベイヤーRGB変換後も緑の格子縞は残ってしまうのはV3装着時と同じです。ただし、ノーフィルターで青の強いフラット画像が必要な事はないので、実害はありません。

2つのG素子の値を別々に見るソフトはあまり無いので、とりあえず作りました。RAWデータを解析してCanonのデータも見てみたいですね。
本来なら中央値とかの方が良いのでしょうが、上のフラット画像の4素子の平均値です。どちらのG素子も周辺減光の形には全く問題はないのですが、2つのG素子の明るさの差は、SI6でフラット補正後ベイヤーRGB変換すると大きな問題を生じてしまいます。LPS-V3で撮影した星雲画像のG素子にも同様の差があれば、辻褄が合うのかも知れませんが、先日撮影したバラ星雲の平均値(縦横比変更しました)で見る限りそのような傾向はありません。 
左が2つのG素子の平均値がほぼ同じフラット画像とそのフラットで補正した星雲の画像、右が問題の画像です。フラット補正をした星雲画像に市松模様が生じているのが分かると思います。V3で撮影した画像にはV3を付けて撮影したフラット画像が効果的なはずですが、こんな模様が入ってしまっては困ります。V3を装着せずにフラットを撮影した場合の方が良い結果になることもあります。私は2つのG素子の値を平均化する補正を行ってお茶を濁していますが、根本的な解決にはほど遠いです(実は左画像がそれです)。

やってみると意外に簡単で効果のあるフラット画像を使ったフラット補正ですが、突き詰めていくと底知れぬ深さがあります。

   
CanonのRAWデーターを処理する方法を見つけました。12bitとか14bitの値がちょっとよく分からないのですが、画像内の相対関係は正しく表示出来るようです。
   
2009.11.9 EOS kissDigital XのRAWデータ
CanonのRAWデータを解析するのはめんどくさいなーと思っていたのですが、何のことはない、一旦SI6にベイヤー配列で読み込んでから16bitのFits形式で書き出したものを使えば簡単だったのです。SSP用に書いたプログラムの数値を変更するだけで読み取ることが出来ました。左は11/6に胎内の自宅庭で撮影したNGC281の月が昇る前のG素子のグラフです。DXは12bitなので最大値は4096になると思いますから、4素子の平均値は妥当な数字だと思います。 
ちなみに先日遠征した早出川ダム付近のデータです。上のNGC281より2分長い10分露出しているのに、これしか周辺減光がないと言うことは、いかに空が暗いかということを証明してると思います。 
これは月が昇って1時間ちょっと経過したNGC281の最後の1枚です(EOSkissDXでは8分露出で11枚撮影しましたが、今の所月の影響の無い4枚しかコンポジットしていません)。ものすごい周辺減光のように見えますが、強調してあるだけで補正できないほどではありません。ただし、1枚毎にフラットとカブリを補正してからコンポジットしなければならないのでめんどくさいです。
   
2009.11.10 EOS kissDigital XのV3フラットは
結論からいうと、DXはV3を付けてフラット画像を撮影しても、2つのG素子の値は殆ど同じでした。G素子の格子縞問題はSSPに限定した問題ということになります。SSPではLPS-V3を付けて撮影する場合、補正に使うフラット画像では2つのG素子の値が同じになるような加工をすべきかも知れません。ただし全てのSSPが同じ問題を抱えているかどうかは不明です。

DXの話に戻りますが、ノーフィルターとV3で同じ光源を撮影した場合、SSPと同様にB素子の値はかなり高くなりR素子の値は低くなります。そしてR素子の周辺減光は殆ど無くなります(単に光量が少ないだけかも知れませんが)。これは以前周辺減光について調べたときと同じ結果です。 
DXのLPS-V3FFフィルターを外し、露出を半分にして撮影したフラットです。平均値ではBの値が同程度になりますから、フィルターによる減光は約1/2と考えられます。これに対してGは露出半分でやや値が大きくなるのでBより若干減光量が少ないと思われます。最も変化が大きいR素子は露出が半分でも値は倍になっていますからV3フィルターによる減光は約1/4と考えられます。ちょっと意外な結果だと思いませんか?ちなみに私のDXはSeoSP2です。

V3装着時の露出は、ノーフィルター時の2倍程度と言われていますが、単純計算ではRは4倍必要な事になります。しかし現実には、赤い星雲の写りはノーフィルターと同じ露出時間でも殆ど変わりません。私の想像ですが、Rはカットされる波長域が広いだけだと思います。つまり必要なHα線のコントラストが高まるということではないでしょうか? 
   
   まとめ

途中で分析ソフトを作ったりして、だらだら書き続けましたが、まとめると大した内容は無いです。

1,フラット補正に使うフラット画像の明るさはあまり気にしなくても、結構補正できる
2,カラーCCDで正確にフラット補正するには、RGB毎に周辺減光の山を合わせる必要がある
3,山の形を合わせるにはヒストグラムのピークを同じ位置に持ってくるのが効果的
4,RGBそれぞれにピークを合わせるにはRAP2が便利
5,SSPではV3フラットで2つのG素子の値が大きく異なる事があり、補正後格子縞が出来て問題となる
6,同じ条件で撮影してもEOSKissDX改造機では2つのG素子の値は異なることがない

とりあえずここまで来たので、SSP用にRAP2みたいなソフトを作るつもりです。特に互換性とか関係ないので、面倒な変換しないで撮影した画像をそのまま使えるようにしたいですね。
   
2009.11.14 フラット作製ソフト

このソフトでフラット画像を作製し補正

トップページの画像
PIで背景補正
 これまで何度か登場したRAP2は、残念なことにSSPに対応していません。

今回のフラット分析でSSPのベイヤー配列を自由にいじる環境が整ったので、SSP用にRAP2の様なソフトを作ることにしました。同じような機能にしても良かったのですが、独自性を持たせた方が面白いと思ったので、フラット補正を行う星雲画像とRGGBそれぞれの平均が同じフラット画像を作り出すソフトにしてみました。

 前にも書いたように周辺減光の山の形は明るさによって微妙に変化します。これは簡単に関数などで近似出来るような性質ではないためか、画像処理ソフトでフラットを調整する事は基本的には出来ません。そこで、今回のソフトでは露出の異なる2つのフラット画像から、目的のフラット画像を近似するという方法をとっています。
まず、RGGBそれぞれの明るさの比率が撮影画像に比較的近くなる光源を用意して、撮影画像のRGGBの平均値に比較的近いフラット画像を撮影出来るようにします。RAP2では各色毎に露出を変えて、それぞれ明るさがぴったりのフラットを作製して、RGB合成することで精度を上げていますが、このソフトは1,2秒露出時間を変えて撮影した2種類のフラット画像からRGGBそれぞれの平均値を計算しその差を元にRGGB各1538240個の素子それぞれの変動量を計算して、撮影画像とほぼ同じ明るさのフラット画像を作り出します。各素子の変動量は現実には直線的ではないため、用意する2種類のフラットは撮影画像に比較的近い値になるようにする必要がありますが、ぴったり合わせる労力は必要無いというのがメリットです。出来上がったフラット画像の平均値は、撮影画像の平均値と全く同じになることはありません。これは、平均値を合わせることが目的では無く、その平均値でのフラット画像の形態を予測することがこのソフトの目的だからです。

このフラット作製ソフトを使えば、月の出などで1枚毎に明るさが異なる撮影画像でも、2種類のフラット画像から、何種類でも、それぞれにぴったりのフラットを作製することが出来るようになります。今回撮影したNGC281は撮影が月の出にかかってしまったので、実験材料としてはぴったりです。4枚の画像それぞれに合わせたフラットを作製し、SI6でフラット補正、その後カブリを補正しました。PIでの背景補正を行った画像と比較しても、大差ない程度に仕上がったと思います。
 このようなフラット加工方法が理論的に正しいかどうかは分かりませんが、しばらく使って効果を検証してみようと思います。
   
2010.3.26 追記

今年の冬は、例年以上に撮影チャンスが少なく、未だに冬眠状態です。去年の冬はソフト作りに精を出していたのですが、今年はスキー以外は海外ドラマを見て過ごしてしまいました。
 

「ピタット」操作画面
SSP用に開発した「ピタット」ですが、なかなか良くできたのでEOS40Dに移植しました。カメラレンズのフラット画像は癖があって上手く補正が出来ないこともあるのですが、このソフトでは直接フラット画像の断面と撮影画像の断面の任意の位置で比較できるので、手強いレンズでもフラット補正が可能になるかも知れません。 

ピタットでは、撮影画像のRGBそれぞれの平均値に近い、2種類のフラット画像(左画像では色調を調整したELパネルで露出1.0秒と1.6秒の2種類を各8枚コンポジットした画像)を使っています。ここから撮影画像の平均値に最も近いフラット画像を素子毎に計算するわけですが、実際の撮影画像には星雲、星、カブリ等が混在しているので、平均値をピッタリに合わせるとフラットは過補正気味になってしまいます。これを防ぐために画像を比較しながら手作業で平均値の補正をする必要があります。

※今にして思うと補正結果が完璧にならない理由はこれだけではなさそうです。
そこでピタットの最近機能には縦横それぞれ任意の位置で画像の断面を切り出す機能をつけました。これはかなり強力にフラット作製を支援してくれます。立体図で重ねてもゴチャゴチャで比較は出来ませんが断面で比較すればカブリの程度も確認できるので、フラット補正後のカブリ補正にも役立ちます。

開発当初は、コンポジット前のフラット画像を処理するつもりでしたが、現在はダーク補正後のフラット画像をコンポジットして使用し、近似されるフラット画像が1枚だけになるようにしています。撮影画像もダーク補正をしたベイヤーファイルです。Fitは16bit整数を使用しているので厳密にはコンポジット後の小数点以下が生かされません。本来なら近似後コンポジットした方が良いのですが、フラット画像を撮影画像1枚毎に用意した方が仕上がりが良くなるので、フラット画像が1枚ですんだ方が煩雑になりません。 
横方向断面で見た撮影画像と近似したフラット画像です。カブリの多いGを表示しています

断面の左端と右端を比較すれば、撮影画像の右側にカブリがあることが分かります。Gの平均値は一旦フラットを計算し、この方法で比較して最も適合したフラットになるよう補正して使います。そこまで厳密に合わせても所詮近似なんですけどね。

最近撮影したオリオン座のフラットはこの「ピタット」で計算しました。なかなか上手く行ったと思います。

このソフトの問題点は地上風景などが混ざっている星景写真では、計算の根拠となる平均値が当てにならないと言うことです。一般的には星景写真でフラット補正が必要になるほど強力に画像処理することはないと思うのですが、場合によってはフラット補正したくなる場合もあります。
  2010.9.26追記

満月でやることもないので、久々にソフトいじりをしました。
これまで「ピタット」はベイヤー配列の撮影画像のR,G,G,Bそれぞれの平均値を元に2種類の明るさのフラット画像から撮影画像にピッタリの平均値で加算平均前のフラット画像を多数枚近似していました。今回の改良では、近似に使うフラットはダーク減算し平均した1枚ずつとし、撮影画像もダーク減算したベイヤー配列画像の平均値を使用することで精度をあげ、更に作り出されるフラット画像は平均値を算出した撮影画像1枚毎に1枚作れるようにしました。開発時にパックマン星雲を補正したときは1枚の撮影画像に8枚の近似フラットを作成し平均していたので、非常に煩雑でめんどくさかったのですが、今回の改良と処理シーケンスの変更で、かなりスマートに短時間で処理が可能となりました。
 
改造のついでに、画像の1部分の平均値から補正値を計算する仕組みを加えたので、画像全体の平均値を使うことが出来なかった星景写真でもピタットによるフラット近似が可能になりました。
左の平面図が、撮影画像とピタットで近似したフラットを強調し重ね合わせた断面です。切断はほぼ画像中央の横断面になっています。疑似3D画像は作成されたフラットの強調画像です。
ピークが若干右にずれているのは光軸かスケアリングのズレなのかも知れませんが、4隅に気になる収差があるわけではなく、レデューサやフラットナーを交換しても同じような傾向なので放置してます(ひょっとするとSSPのCCD取り付け位置かも知れないと疑っています)。 3Dではホコリによるくぼみがはっきり分かります。

断面図では近似されたフラットの形態が、星のスパイクを除いた撮影画像と非常に良く合っていることが分かります。勿論、縦断面、横断面、何処で切っても山の高さは異なりますが同じような結果となります。
今回、実験に使ったクラゲ星雲は1月に撮影した時にピタットで補正を行ったのですが、あまり良い結果となりませんでした。今回全く同じフラット元画像を使用したにもかかわらず良好な結果となった理由は
1,フラット元画像は加算平均し各1枚で行った。
2,撮影画像、フラット画像共にダーク減算後のデータで近似計算を行った。
3,撮影画像1枚毎にフラット画像を作成し、それぞれ補正後にベイヤーRGB変換、コンポジットを行った。
と言うことだと思います。

結果、靄の濃度でB画像の平均値が大きく変化している元画像でBを過補正せず、中央部が比較的平坦なフラットですが、平坦部の値を正確に合わせることが出来たのでしょう。

※こだわり続けたカラーCCDのフラット補正ですが、実は最近はあまりこだわっていません。RGBヒストグラムのピークを合わせてフラットフレームを作る程度の事はしますが、それでぴったり合わなくても何度もフラットフレームを撮り直したりせず、PixInsightでDBE/ABEを使って処理してしまいます。

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