@星マスクの世界

大人の画像処理、まずは星マスクのお話から始めたいと思います。

画像処理を始めて、ダーク補正やフラット補正も何とかできるようになると、次は綺麗に仕上げるにはどうしたらよいのか、試行錯誤が始まります。
ステライメージやフォトショップでレベルやトーンカーブを闇雲にいじって、「なんかいい感じじゃない!」という時期が終わると、自分の作品とハイアマチュアのホームページを比べたり、天文誌のフォトコンと見比べてどうやったら綺麗になるのか真剣に悩むようになります。もっと良いカメラが必要なのか?望遠鏡が悪いのか?色々考えますが、フォトコンの機材はどれも高額で、簡単に買い換えられる人は少ないでしょう。

その頃、私は気が付きました。ハイアマチュアはすごい機材を使っているだけでなく、すごいテクニックを駆使しているのだと言うことです。ひょっとして機材に頼らなくても、ある程度ならハイアマチュアに迫れる作品を作れるのではないか?その技術の1つが星マスクです。使い始めて1年で、漸く星像を美しく仕上げられるようになりました。今回はそこまでの技術を、何回かに分けて、ご紹介したいと思います。

2010.10.21 追記
このテーマはこれで終わりです。
微光星の色、星のピーク、一眼デジカメやカラーCCDの限界にかなり近づけたと思います。

2010.9.29 追記
星を綺麗に仕上げたい、でもタ○ハシじゃないし、モノクロCCDじゃない・・・。
そんな私の強い味方「星マスク」の使い方です。

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第1回 星マスクへの誘い(2009.9.14)

 
わし星雲の頭部画像です。

左が星マスク無しの画像。右上の画像がこの星マスクのコーナーで最終的に目指す画像です。

私が星マスク(最初は恒星マスクと呼んでいたのですが、Yottyanさんの「星マスク」に勝手に統一させてもらいました。)を作れるようになってからしばらくは右下のような星像の画像を作っていました。明るい恒星が同心円で、恒星周囲には黒トビが見られます。これでもソフトビニングしてしまえば殆ど目立たず、恒星像が小さくなった感じがします。この方法でも星マスクを上手く調整すれば、かなり自然に仕上げることは出来ますが、やはりどこかに無理がある感じがします。
 
ちなみに新しい星像補正を使った作品は、こんな感じになります。

今までの画像より星が小さいだけではなくて、微光星がキラキラしてますね。星色の問題はまた別の機会に考えたいと思いますが、拡大画像ですっきりした星はソフトビニングでWeb用に縮小してもそれなりに綺麗です。
 
まず星マスクなしの画像です(左)。

ダーク減算、フラット補正、コンポジット、デジタル現像をステライメージで行った画像を普通にレベル調整し、トーンカーブでコントラストを付けた状態です。倍率は200%となっています。

調整レイヤーを見ていただければ、星マスクを使った処理を行っていないことが分かると思います。今回のシリーズではレイヤー構造をわかりやすくするために、背景ノイズの除去や色調補正レイヤーは使っていないので、殆ど元画像のままの色調です。 
 
私が最近まで使っていた星マスクのレイヤー構造です(右下)。

基本は一番上の星マスクで、これが元画像の星像を調整レイヤーの処理からマスクしてそのまま残す役目を持っています。その下の2つのレイヤーからなるグループが恒星周辺の明るさや色を不自然にならないように調節しています。

この作例では、このレイヤー構造の欠点をわかりやすくするために、ちょっと極端に作ってあります。 

明るい恒星が同心円になってしまうのはなぜでしょう?
星雲の中の恒星周囲に黒トビが出ているのはなぜでしょう?
このレイヤー構造では、これらの問題を解決するためにとても繊細な星マスクの調整が必要でした。
 
 最近使うようになった、星像補正レイヤーを用いた画像です(右上)。

このレイヤーグループは元画像の直上にあって構造自体は単純です。それなのに星像は小さく、色も損なわれず、周囲に不自然な黒トビもありません。明るい恒星が若干平面的だったり、暗い恒星にもっと芯があっても良い感じもしますが、基本と言うことで、今回はこれを完成像として話を進めたいと思います。

どうです? 200%に拡大してもこれだけ自然に星像を小さく出来たら、嬉しくなりませんか?


第2回 星マスクの作り方(2009.9.16)

 
星マスクの作り方は、
ttp://blogs.yahoo.co.jp/yottyan_cryyagi/26725067.html
ここに本流があります。

明るさの最小値を使う方法もあるようですが、私の場合ダスト&スクラッチでぼかします。微光星は半径6程度でも消えますが、明るい恒星を完全に消すためには半径20程度のぼかしが必要で星雲の構造が崩れてしまいます。つまり、ぼかしが大きくなると星雲の形に差が生じて差の絶対値で消えない部分が出ています。明るい恒星を犠牲にして星雲をなるべく消去するのであれば半径15程度が良いでしょう。明るい恒星は別に明るい恒星だけのマスクを作製して比較合成すれば問題ないのであまり気にせず、レベル補正で消しにくいような星雲の差が生じない程度のぼかし幅とします。
 
次にぼかした画像と元画像を重ねて差の絶対値をとります。ダスト&スクラッチでぼかした画像には鋭い恒星像が無いので大半の恒星は残りますが、星雲はごく明るい部分を淡く残して消失します。

ぼかし半径を大きくすると明るい恒星もかなり暗くなってしまいますがここでは気にしません。
 
この画像をグレースケールに変換します。その上でレベル補正を行い、残っている星雲の切れ端を見えなくします。
カラー画像のままレベル補正するよりもグレースケールに変換した方が星雲の残骸を消すときに微光星が犠牲になりません。

なぜでしょうね。256階調のグレースケールにした方が比較的白い星は有利なんでしょうかね?よく分かりませんが、皆さんも試してみて下さい。 
 
 
状況に応じて、 Yottyan流のαチャンネルを使った塗りつぶしが有効です。この操作は繰り返し行うほど星は白くなりますが、必ず一旦選択解除してから繰り返すようにします。ある程度大きな恒星もこの処理で明るさを回復できることがあります。

この処理でも明るく出来ない恒星は、別に大きな星だけの星マスクを造って重ね合わせます(後述)。
 
このようにしてできあがった画像を反転すると標準的な星マスクになります。これを元画像と重ね合わせてみます。

この星マスクは明るい星は濃く、微光星はわずかにマスクされることが分かります。これは利点でもあり欠点でもあります。画像全体のレベルを上げると星マスク効果の弱い微光星が強調されすぎるのでは?という感じもしますが、必ずしもそうではありません。微光星周囲の星雲や背景のレベルが上がるので微光星が取り残されるとかえって不自然になるのです。欠点はむしろ恒星周辺の色滲みやボケを緩和するときに微光星の色や光度を維持できないと言うことにあります。
 
そこで、実際に画像処理で使うときには、明るさの最小値・最大値、レベル補正、明るさ・コントラスト、ガウスぼかし等で大きさや濃さを調整し、その処理にあった様々な星マスクを作ることになります。 

左は上の星マスクを明るさの最小値半径2pixelで拡大し、ガウスぼかしとレベル補正で恒星のマスク範囲を大きくしてあります。
 
微光星を保護するために、しっかりマスクしたいときには、星マスクを一旦2階調化することで小さな星も均一な濃さのマスクを作ることができます。2階調化すると星の境界がはっきりしてしまうので、ガウスぼかしを0.5から1.0pixelほどかけて滑らかにします。 これをやりすぎると微光星のマスクは滲んでしまうので、注意が必要です。
 
最後に大きな星だけのマスクです。
左の履歴を見ると明るさの最小値で画像をぼかして、そのままグレースケールに変換しています。ポイントはぼかした画像をそのままグレースケールにしてレベル補正を行い、星雲を消してしまうところにあります。明るさの最小値ならば2,3pixel、ダスト&スクラッチならば5,6pixel程が適当です。レベル補正では星雲と大半の微光星が消える程度に強力な補正を行うことにより、明るい星だけが残ります。明るい恒星の大きさも小さくなっているので上で説明した塗りつぶしとぼかしで、必要なら明るさの最小値などでさらに大きくします。

いろいろな星マスクを必要に応じて自由に作れるようになると、画像処理の幅が広がり、今まで考えもつかなかった恒星周囲の微小領域の画像処理が可能になります。
 
続く・・・


第3回 星の無い星雲画像は綺麗でしょうか?(2009.9.20)

 

この連載では、星マスクを造るために星のないぼかし画像を使う方法をご紹介しました。それ以外でも、星雲を強調するためにぼかし画像を使ってマスク作りをする方は多いと思います。星雲の色調をいじる場合、星雲の解像度は多少犠牲になっても恒星像がないマスクが有効ですから、、ダスト&スクラッチは簡便で有効な方法です。もちろん星雲の構造を強調する場合、このようなマスクは使えません。話はちょっとそれましたが、

この星のない星雲画像こそが、今回の星像補正には欠かせないレイヤーになります。

既にピン!ときた方も多いと思います。
左から右の画像のように星を小さくすると、小さくなった部分を何かで埋めなければ黒トビしてしまいます。最適な素材は星の向こう側にある星雲その物ですが、星をどけて撮影することは出来ません。高性能の光学系を使って高シーイングの時に、撮影すれば星像を小さく撮影する事が出来ますが、なかなか大変な事です。 

そこで星のないぼかし画像が登場するわけです。
 
レイヤーマスクをつかってぼかし画像に恒星周囲だけを透過する星マスクをつけます。更にこのレイヤーをレイヤーグループとしてグループマスクに元画像の恒星像より小さめでしっかりコントラストの付いた星マスクを置きます。このマスクは星像を確認しながら.0.3pixel程度ぼかします。

わかりやすいように背景を黒塗りしてありますが、ここに元画像を入れてみます。
 
すると、星だけ小さくなったように見えますね。実際には小さくなった様に見える星は、元画像の恒星中心部がグループマスクで透過して見えていて、その周囲の本来恒星が広がっている部分には星無しのぼかし画像が嵌め込まれています。そのため星雲の濃い部分でも問題なく星像を小さくすることが出来るのです。スターシャープ系のフィルターには無い利点です。
欠点は補完部分がぼかし画像なので、厳密な意味では恒星周辺の解像度はかなり低下すると言うことです。対象によっては問題となる場合もあると思います。
 
このレイヤーの上に更に調整レイヤーを重ねて、星雲部分のレベルを上げ、トーンカーブでコントラストをつけても、星像補正部分は破綻しません。

マスクの精度が悪いと上手くいきませんから、最初のうちはできあがりを見ながら、星マスクを改善する必要があるでしょう。ただしこの星像補正では元画像の恒星中心部を使っているので、星の色や芯に不満が残ります。特に星の色は元画像の恒星中心部が飽和していると修復することが出来ません。撮影・デジタル現像時に十分注意して処理を進める必要があります。


 星マスク技術が向上すると、更に微妙な色滲みやハロの改善をするレイヤー構造を造ることが出来るようになります。
   
この連載はこれで終了です。

この処理は非常に強力で、全く星の無い画像(画像処理の材料としては有効ですけどね)を造ることも出来てしまうことを忘れずに、節度をもって使いましょう。

例によってT-Fixさんのブログを読んでいたら、閃きました。この処理をちょっと応用すると、元画像の星をそのまま使うことが出来ます。このままでは、ちょっと星雲が明るすぎますね。

フォトショップ上での画像処理を全く通さず、デジタル現像で輝度を調節したままの星を、調整レイヤーを通した星雲の上にちりばめる。綺麗に撮影された星像をそのまま使いたいときには最高の方法だと思います。

ポイントは、ぼかしを使わずに、星のない星雲画像を作ると言うことです。
   
2009.9.28 さらに追加

 
 T-Fixさんが試して下さったのですが、私の解説が悪いせいで折角の星雲がぼけてしまったようです。多分わし星雲のサンプルが等倍で星の大きな領域なので感覚が掴めないのだと思います。

仕事中の片手間ですが、追加説明を作りました。画像が大きいのでご注意下さい。

「星を小さくする処理」というと小さくすると誤解されそうですが、、これは元画像の星像が星雲のレベルを上げるときに肥大化して周辺に明るい滲みが出てしまうのを元画像の大きさにもどすと言うことです。ただ元に戻すと周辺に黒飛びが生じてしまいます。この黒飛びをぼかし画像で埋めると言うことです。

画像中、最も明るい星はこの処理で小さくできません。その理由はダスト&スクラッチ17pixel程度ではこの星をぼかすことが出来ないからです。そこでこの星については中心部の白抜けを軽減する処理だけを行っています。

ぼかし画像は、ダスト&スクラッチで、元画像をぼかした画像で実際には左のように明るくはありません。本物は元画像と同じ明るさですが、解説のために完成画像と同じように処理したぼかし画像にしてあります。

矢印で示す3枚の画像で、1つのグループが構成されています。このグループで作られる画像は、完成画像の肥大化した星像と同じ大きさで、元画像の大きさの中心部をくり抜いた、ドーナツ状の画像です。それぞれのぼけの大きさは基本的に「肥大化した星と同じ大きさ」なので完成画像の星雲がぼけることはありません。

注:実際には効果を見ながら、ガウスぼかし等で若干調整する必要があります。

このドーナツの中心から元画像の星が透過して見えるのです。

 
ここまでの処理で、星は小さく?なります。

左画像がその効果です。ここは微光星の多い領域ですが、ある程度大きな星でもそれなりの効果はあるので元画像完成画像を比較してみて下さい。星雲は明るくなっているのに、星像は殆ど同じ大きさだと思います。ただしこの処理では、星の中心部は白く抜けて平面的になってしまいます。

これを解消するのはなかなか大変なんですが、2つ上の段で私がT-Fixさんのお陰で「閃いた」元画像の星をそのまま使うことでかなり良くなります。

この「閃いた処理」はM33で使っています。ちょっと片ボケなのであまり見せたくないのですが、等倍画像で比較してみて下さい。上:未処理、中:小さくする処理、下:元画像の星その物、です。

どうやるのかは、まだちょっとお話しできるほどには、煮詰まっていません。

   
2010.9.29

閃いてから1年、漸く公開する自信がつきました。
私の作品をご覧頂ければ分かると思いますが、その程度の効果です。

今回は比較的小さな恒星に着目して話を進めます。拡大画像は横100ピクセル程度の強拡大です。
まず全体像から、

淡い星雲を撮影すると、コンポジットしてデジタル現像を使っても左上のような元画像になります。これ以上レベルを切り詰めると恒星が飽和します。この画像をTIFでフォトショップに持ってきて画像処理を始めるわけですが、この辺は元画像の掟を読んで下さい。

画像のレベルを持ちあげて切り詰めると左下のようになります。星雲は見えてきましたが周囲の星が煩いです。加えて明るい星の中心部は真っ白。これではいくら星雲が見えてもあまり綺麗ではありません。大抵の場合ここで星雲以外をマスクして星の飽和を抑えるのですが、星雲の広がり、暗黒帯などを意識すると安易に星雲強調マスクは作れません。

そこで星マスクを使うことになります。去年作製した部分の説明で、元画像にある恒星周囲の滲みが原因となる肥大化を抑える星マスク構造はご理解頂けたでしょうか?肥大化の原因となる恒星周囲の滲みを元画像の恒星をぼかした画像と置き換えることで緩和するだけなのですが、うまく調整出来れば絶大な効果があることは、お分かりいただけると思います。とは言っても、理屈と実践は大きく異なり、勘所は自分で試行錯誤してつかみ取っていく必要があります。
現在私はこのレイヤーグループ以外に、偽色緩和、元画像の恒星透過の2種類を使用して作品を作っています。今回はその構造について説明しようと思います。
まず、全ての星マスク構造を使った状態です。

この画像の中で最も明るい恒星を等倍で見てみるとこんな感じです。小さな星なので一見良さそうに見えますが、強拡大でみるとこんな感じで恒星の中心は若干なめられているというか、半球形であることが分かります。光源は点ですからピークはやり状になって欲しいのですが、レデューサのバックフォーカスの調整が甘く、ピント精度など撮影時の問題も含まれていると思います。この問題は先の課題として、今回は星を飽和させずにこの程度の星像を造り出すレイヤー構造を解説したいと思います。

2010.10.17
星のピークが綺麗に丸くなめられている現象は、デジタル現像の影響でした。20分露出の画像は既に明るい恒星のピークは飽和寸前なので、デジタル現像を見た目に頼って強くかけすぎていたようです。これまでデジタル現像でレンジを1/3程度に切り詰めていたのですが、ちょっと考え方を変えないといけなくなりました。


まず、偽色緩和のレイヤーグループをOFFにしてみます。恒星周囲が赤っぽくリング状になっています。画像全体で見ると、星の密集した部分が何となく赤く感じるほどです。

下2枚は、この偽色緩和のレイヤーグループで使用している星マスクです。このレイヤー構造で色相・彩度の彩度を落とせば恒星周囲の彩度だけを下げることが可能です。この時、明るさも若干下げてやることで、1つ下のレイヤー、元画像の星像透過とのつなぎ目を違和感なく仕上げることが出来ます。言うまで得もありませんが、下げすぎると恒星周囲に黒い輪ができてしまいます。
次に元画像透過と書いてあるレイヤーをOFFにします。すると恒星の中心部が真っ白に飛んでしまうことが分かると思います。このレイヤーの画像は元画像その物で、マスクは星の中心部をマスクする星マスクを反転して使っていますが、微光星まで正確に透過した方が綺麗になります。このレイヤー1枚で、元画像の恒星中心部がこれより下のレイヤー構造をスルーして最終画像に反映されるのと同じ効果が得られます。

ただしこのレイヤーを違和感なく使うためにはこの下の星像縮小レイヤーグループが必須です。このレイヤーだけではすごく不自然になるだけです。



星像縮小をOFFにした画像です。この部分が一番最初に考えついた、最も重要なレイヤーグループになります。これが無ければ上の2組は副作用が多くて使い物になりません。OFFにするといかに星像が大きくなるか上の画像と見比べて頂ければ明らかだと思います。左の下3枚がグループに使用しているマスクと画像です。星マスクの2枚組は偽色緩和と似ていますが、恒星中心部をマスクする画像は出来るだけ小さな星まで残してあります。星を透過するマスクは若干星を肥大化して使用しますが、これを大きくし過ぎると画像がぼけたような感じになり、小さすぎると効果が十分に得られません。このバランスはかなり微妙です。

一番下はダスト&スクラッチ17程度で星像をぼかした元画像です。このぼかし加減は撮影した星雲の状態や微光星の密度で調整する必要がありますが、それほど微妙なさじ加減が必要なわけではなりません。
これで第1段階のレンジの切り詰めが完了します。この画像を元に第2段階のレンジ切り詰めをやってしまうのが私の画像処理の欠点であることは分かっているのですが、ここでやめる訳にはいかない性分なんですね。

その話は淡いということに書いてあります。 
    全部で5枚のレイヤーを使ってしますが、重ね方と使う枚数は何通りか別バージョンが可能です。私としては、この形が分かりやすいと思います。

ここまでの処理で、かなり星らしい画像になるのですが、極端にレンジを切り詰めていくと明るい恒星の肥大化を止められません。画像の雰囲気では無理にいじらない方が良い場合もありますが、必要があればこれと同じような考え方で大きな星を上手くマスク出来るように工夫すれば良いわけです。とは言っても、非常に明るい恒星やゴーストが付いている恒星の処理は簡単にいかない場合が多く、これはまた別の話になると思います。
   
2010.10.21追記、そしてこの章の終わり・・・


等倍100%

前回の追記で使用したカシオペアγ星周辺の等倍画像です。この画像がこの章の全てを含んでいると思います。

この画像ではデジタル現像の副作用であった星像のピークがなめられる点と、星像縮小の副作用である微光星の色が出にくい点を、ある方法で回避しました。明るいγ星のゴースト処理も全くレタッチを使っていません(この話はまた別の機会にしたいと思います)。

星の色と輝きをカラーCCDで手に入れるには、星雲ではなく星を撮影すれば良いのです。今回は10分露出で最も星像が綺麗な1枚のみを使用しました。この場合コンポジットは星像を悪化させるだけです。デジタル現像は使わずに、星の色と明るさが最も美しい画像を作製し、前回説明した元画像レイヤーの上に重ねて境界が自然になるように調整する事でこの画像となりました。偽色処理レイヤーがある場合はその上のに重ねることになるでしょう。

この画像では、星は大まかに4つの同心円から出来ていると言うことになります。
最外周: 星マスクでは処理しない星雲と同レベルの層
外周:  星雲強調で明るくなりすぎるため、星マスクで星のない画像と置き換える層
星:    デジタル現像した元画像をレンジを切り詰めた画像の上に透過した層
ピーク: 短時間露光でデジタル現像を使わずにレンジを切り詰めた1枚画像から得られた中心部

ただし本当に小さな星は下2層しかありません。

偽色がある場合は更に1層加わりますが、あまり強い場合は上手く仕上がりません。やはり撮影で出来る限り良い星像を得た方が良い結果につながることは間違いありません。

「星マスクの世界」で書き留めておくことは、今の所これで全てだと思います。これがカラーCCDの限界というのは1000%画像の微光星の構成ピクセル数を見て頂ければご理解頂けると思います。ベイヤーRGB変換の1単位が2×2ですが、1素子周囲全てに影響が及ぶので、おそらくカラーCCDでは3×3以下の恒星を表現することは出来ないと思います。

ネット上のモノクロCCDの作例をみると恒星の発色、解像度はどれも素晴らしく、カラー一発撮りでは到底太刀打ち出来ない事は分かっているのですが、モノクロへの移行はハードルが高すぎます。カラーCCDで何処までやれるかも1つの楽しみ方と思って続けていこうと思います。


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