19 最終回 デジタル画像処理、5年の変遷

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2005年

まず気になるのは背景の色です。
フィルム時代、背景に色が付いているのは当たり前だと思っていたので、画像処理でも殆ど気にしていません。
このころは、背景が十分暗く、銀河とのコントラストがしっかりついていれば、それで良かったのです。銀河の中心が白飛びしていますが、腕が見えていたので、デジタルカメラすごい!と感じていました。
 
2006年

背景が黒いです。それもそのはず、RGBは全て10を切ってますね。

逆に星雲の明るい部分でもレベル200は越えず、恒星だけが飽和して肥大化しています。このまま星以外の全体で、レベルを50底上げすればニュートラルグレーの背景に250の星雲になるわけですが、 当時自分としては背景は暗い方が星雲が引き立って良いと思っていました。さらに背景を暗くすると、わずかなカブリや周辺減光は分からなくなってしまうので、あえてレベルを落としていた時期もありました。
 
2007年

Borgの明るいレンズを使って、星雲を充分に露光することが出来るようになりました。レベル256を余す所無く使って表示できるようになっています。背景のレベルも50には至りませんが真っ黒ではなくなっています。ノッペリしていても淡い部分が浮き出れば満足していました。ノッペリ感の原因は長年使い続けたフォトショップ6にも原因はありましたが、ノッペリが悪いとは思っていなかったのですね。この頃は、星像にも殆ど無頓着です。 
 
2008年

最先端の画像処理を意識するようになって半年、漸く今風の画像を作れるようになって来ました。自分の中にあった「これだけやって写真と呼べるのか?」と言う疑問にもフタをして、よりよい作品を目指す踏ん切りがつきました。

画像処理と画像作製の相違点ですが、画像処理は再配列、画像作製は新規配列。そして画像処理ではフリーハンドのマスクを作らないと言うことだと思っています。カブリ補正のグラデーションマスクも反則かな? 
 
2009年春

カラー冷却CCDを使うようになって、露出時間が長くなりました。合計2時間超の露出時間も当たり前になり、一晩当たりの対象数は昔より少なくなりました。このアンタレス付近は撮像時に迷光が入っていて約半数が没になり、10分*4、20分2枚という残念な作品です。
星像にも気を配るようになり、ハレーションや光学系の収差、星の飽和を意識して撮影するようになったのですが、そうなるとワンランク上の機材に買い換えるアマチュアの方が多い理由もよく分かってきました。 
 
そして、2009年秋

星像の処理も、昔よりは格段に上手くなり、A3印刷しても破綻の無い画像処理、と言う意味もおぼろげながら分かってきました(実際に印刷することは無いと思いますが)。 

5年間で最も進歩したのは「見分ける目」です。天体画像の処理技術としては、これで漸くスタートラインに立ったと思っています。これまでの経験や技術を、それぞれのケースで、どう磨いていくかが「大人の画像処理」です。

 画像処理の新たな道が開けたことを記念して、5年間の苦闘を振り返ってみました。


 フジのFinePixS2Proから私のデジタル天体写真は始まります。

それ以前は殆どリバーサルフィルムで撮影していたので、画像処理と言っても、フィルムスキャナーで読み込んでパソコンで表示して喜んでいた程度です。私の場合、殆ど独学だったため、天ガやネットの情報を元に試行錯誤の画像処理時代が幕を開けたのでした。仕事でフォトショップを使う機会が多かったので、画像処理は雑誌の記事や本を参考に仕事のシステムをそのまま使って(怒られそうだけど既に時効)、適当にやっていました。フィルム時代の感覚で、黒い背景、飽和した星、コントラストの強い星雲で全く問題を感じていませんでした。

 今にして思うと画像処理技術を向上させるためには、「作品を見る目」が最も大切で、自分の画像との相違点を認識できないうちは、いかに技術面の知識を勉強しても作品作りに反映されません。


 デジタル画像処理に本腰を入れたのは2008年の春です。ニュートラルグレーの背景、RGB256階調に綺麗に分布した星雲、色のある星々を目指すようになって1年半です。フィルムから移行した当初は元画像が分からなくなるほど手を加える事に抵抗がありましたが、最近は16bitの撮影データを8bitに満遍なく再配列することがデジタル現像と考えて納得しています。16bitの調整レイヤーが使えるフォトショップCS3の購入や星マスクの使用で、明るい恒星を飽和させずに星雲のレベルを調整したり、微光星を抑える事ができるようになり、画像処理の幅が格段に広くなりました。

しかし、この時点では輝く星々はまだ遠い存在でした。


 今回の進歩で、画像内の主要な恒星は、拡大画像にしても不自然な黒トビや同心円などが無く自然な輝きを見せてくれるようになりました。考え方は、星マスクの中の画像処理、という感じでしょうか。星マスクで対象とする恒星以外を全てマスクした画像の中で、さらに精密な星マスクを使って恒星の輝きやぼかし、色調等を補正する技術です。おそらくこの作業で、これまで私の画像の最大の欠点だった星像と恒星色の問題は解決されると思います。問題はそれに見合う画像の撮影ですね。もちろん、ガイドミスや収差、片ボケなどの補正にも使える技術ではありますが、出来れば最初から丸い星を綺麗にしたいです。


滑らかでしかも自然な透明感のある背景、鋭く色とりどりに輝く星々、そして何より、私のこだわりである限界まで淡い部分を追求した星雲、この3つが揃う日も遠く無いかもしれません。



最後に、分析ソフトの宣伝です。

私はこのソフトを、私と同じように画像処理に悩む全ての天文ファンに使って欲しいです。
左に示す5年の変遷は画像や解説文よりもグラフの方がそれらの特徴を表していると思います。大したことが出来るわけではありませんが、軽くて操作は簡単です。画像処理途中で頭を冷やして客観的に画像を見直すツールとして、ネット上の美しい画像のノウハウを勉強するツールとして、ディスプレーの色調補正ツールとして、デスクトップの隅っこにアイコンを作っておいてもらえたら幸いです。



グチャグチャと書き綴った我流処理のコーナーは、これにて一旦打ち止めにしたいと思います。
これからも新たな発展はあると思いますが、それはまた別のコーナーで書き留めていきたいと考えています。

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