SI7 vs PI

私はここ数年PixInsightばかり使っていて、SI7になってからステライメージをあまり使用していませんでした。
SI6.5までは多用していたので、ある程度使い方は知っていますが、実際7で処理するとどのようになるのか試してみたくなりました。
そこでステラーイメージ7のマニュアルを片手に、PixInsightと平行して処理を行ってみようと思います。

今回は最後までSI7とPIだけで処理を行い、途中で他のソフトやフォトショップでの処理は行わない予定です。



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ステライメージ7   PixInsight  
 
 
 まず、ステライメージのマニュアルにある「前処理」、PIではPreProcessが終了した元画像を読み込みます。この実験に使う元画像は以下の条件で撮影したIC1396で、PIのBatchPreProcessing(BPP)でダーク減算、フラット補正、ベイヤーRGB変換、アライメント、コンポジットまで終了した画像です。

CanonEOS X7改造機 Nikkor AiS180ED(F2.8) F4
ISO3200 90秒露出 36枚コンポジット Vixen GPD赤道儀、QHY5L-U、PHDguiding

※ステライメージでPIの画像を扱うために、読み込んだFits形式のファイルに対して演算で65535を乗算してデータ範囲を0-65535に変更してあります。PIでは0-1の範囲のまま使用しています。
 
 まず、リニアデータでの処理です。

どちらのソフトも周辺減光やカブリを補正する手段は複数ありますが、今回は出来るだけ自動で行える物を使用しました。

SI7はツールの周辺減光/カブリ補正を使用します。

PIでは背景からかぶりを除去するAutomaticBackgroundExtractorを使います。フラット補正を行った画像ではFunctionDegree=2 Correction=Subtractionで行うと良いと思います。

カブリの除去について、PIはFunctionDegreeの値にしたがってバックグラウンド画像を作成して減算するので、条件を揃える為SI7でもポイント指定で行いました。
 
 
ここからカラーバランスを調整していきます。

SI7はこのバージョンから導入されたオートストレッチを使用します。
これは背景のニュートラルグレーに使用する領域を指定して、カラーバランスはフィルター係数でRGB合成ならば使用したフィルターの値、デジタル一眼なら見た感じ?で補正します。

PIではBackgroundNeutralization(BN)とColorCalibration(CC)を使用します。
背景の領域を指定するのは同じですが、CCではカラーバランス用の領域も指定します。散光星雲ではRegion of Interestを使用すべきでしょう。StructureDetectionはチェックした方が良いですが、上手く行かない場合は外します。
   
 PIで今回使用したエリアです。
 
 
SI7のマニュアルではここでマトリックス色彩補正を行うと書いてあります。

PIではノンリニア変換(DDP)後に行うので、ここではSI7だけデフォールトの数値のまま実行します。Canonのカメラの場合、この数字はいじらない方が良いとCanpで聞いたような覚えがあります。 
     
 
 ここからいよいよ階調を圧縮していきます。

SI7ではデジタル現像、PIではHistogram Transformation(HT)を使います。

操作方法は圧縮するというイメージで似ていますが、SI7は多機能で色彩強調、エッジ、ガンマなど盛り沢山のウィンドウになっています。これに対してPIはDDP単機能と言っても良さそうですが、STFとの連携で簡単にギリギリの圧縮にする事が出来たり、ヒストグラムが非常に見やすいなどの利点があります。

     
 
 
デジタル現像(DDP)を行った状態です。
SI7では何となく限界に近い感じですが、PIではそれに合わせて自動処理ではなく手動で比較的弱めに行っています。

SI7はすでにマトリックス色彩補正を行っているので、鮮やかな星雲が浮かび上がっていますが、PIはまだはっきりしません。色調も大分異なることが分かります。
星は何となくSI7で煩い感じがします。
 
 
等倍画像で星像を確認してみましょう。

SI7とPIの星像の差をはっきり比較する事が出来ます。
 
SI7は既に彩度を上げているのでクッキリ赤いですが、PIではまだ彩度をいじっていないので、カラーキャリブレーションが終った状態の色調と彩度です。
 
SI7は青ハロ・偽色除去、PIはSCNRを行っています。

全く違う処理ですが、SI7は画像内で指定した偽色を軽減できますし、PIのSCNRではGノイズを限定的に低減できます。 これは非常に効果的ですが、やりすぎると若干色調が乱れます。
 
 
SI7ではバックグランドスムース、PIではACDNRを行っています。ACDNRは輝度が高い部分にマスクを適応しているので、両者は似たような種類の処理と思われます。 
 
 
SI7はネビュラスムースを行っています。 
   
 PIはここで彩度をSaturationCurveで調整しています。このカーブで彩度を調整しても色調に変化を与えません。ようやくSI7に近い所まで星雲が強調されました。

色調がかなり異なります。PIをSI7に似せることは出来そうですが、SI7の何処を調整するとPIのような色調に出来るのか、使い慣れていないので色々試してみないといけません。
 
 
 この状態での等倍比較です。

ノイズの状態も大分違いますが、星の飽和加減と色調もSI7とPIでは異なります。好みもあるでしょうが、私はPIの微恒星の感じがしっくりきます。
 
 
星雲部分の色調の違いはGの違いのようです。

星以外の部分で、Bの変化にGがついていかない事で、マゼンタ系の星雲になるようです。これはどうやらマトリックス色彩補正の所で違いが出るようですね。
 

左SI7  右PI

等倍比較1
暗黒帯の描写

等倍比較2
ガーネットスター
周辺の色調

等倍比較3
背景と微光星
   そこで一旦進行を中断して、SI7の処理をやり直してみます。



マトリックス色彩補正をデフォールトで使うのをやめて、一か所B-Gの関係を変更し、このような設定にすると比較的PIと近い色調になります。試行錯誤なので全て同じように行くわけではないでしょう。

ガーネットスター周辺の黄色はSI7とPI殆ど違いがありません。微光星は若干煩い感じがありますが、形やボケ具合、色調はかなりPIに近いです。



デジタル現像は弱めにして、後は星マスクを作製しトーンカーブで星雲を強調することで恒星の白飛びを抑えてあります。SI7でも微恒星に色がのりました。

SI7に附属のバックグランドスムースとネビュラスムースは利用せず、RGB分解(Lab分解を搭載して欲しいですね)とガウスぼかしでノイズ除去を行いました。


結局PIにかなり迫る画像を得ることが出来ましたが、現時点の課題としては
・暗黒帯の表現
・背景の色ムラが取りきれていない
・Rのノイズが微光星が混在している



このような結果を踏まえ、若干軌道修正して SI7 vs PI をやり直してみたいと思います。
    と言うわけで、SI7のみ振り出しに戻って処理をやり直します。
マニュアルの手順とも若干変更しました。
どちらかと言うと、PIの手順に近いです。
 
 
  まず、Fitsファイルを読み込んだ状態です。

今回はPIのFits形式ファイルの色調がSI7で再現されない事を意識して、SI7に読み込んだままの状態です。かなり緑に偏ってますね。Fits形式で他のソフトの色調が再現されないのは以前からSIの問題でしたが、SI7になっても完全には解消されていないようです。
浮動小数点形式なので、データの質自体には問題ないと信じていますが、どうなんでしょう。

SI7は演算で65535を乗算した後、感覚的に分かりやすいので500を減じてあります。 
チャンネルパレットもヒストグラムのレンジを合わせてあります。ちょっと上達。
 
  SI7のマニュアルやPIでも先に周辺減光やカブリを除去する手順になっていますが、

この画像の場合、どうも先にオートストレッチをやった方が色調がスッキリします。

なぜでしょう? 
 
  次に、周辺減光、カブリ補正を行います。

RGBでポイント指定を行っています。R、G、Bを分解してポイント指定を行うと何となく上手く行きません。 PIのように仮想するバックグランド表示してくれるとありがたいですね。
   
PIはここでバックグランド補正とカラーキャリブレーションを行います。

SI7オートストレッチに相当する作業で、チュートリアルによっては、カブリ補正の前にバックグランド補正を先に行うように解説している物もあります。 
 
  PIではノンリニア変換(DDP)後に行うので、ここではSI7だけデフォールトの数値のまま実行します。Canonのカメラの場合、この数字はいじらない方が良いとCanpで聞いたような覚えがあります。

と、書きましたが、G-Bの欄を一箇所書き換えました。
この方がPIと色調が揃うので、比較がしやすくなると言う事もありますが、単に私がこのような色調を好むということもあります。

 
  SI7ではヒストグラムの左端をそろえた方がデジタル現像しやすいので、ここでレベル補正で微調整します。

PIではデジタル現像後にSTFを使って調整する事にしています。 
   
とりあえず、ここまで。次はデジタル現像です。

SI7のマニュアルでは、 バックグランドスムースやネビュラスムースをやる手順になっていますが、この2つは行いません。代わりにデジタル現像後に手動でノイズ除去をやりたいと思います。
 
SI7は星雲部分の輝度が最終的な値の半分くらいにしました。これは恒星の飽和を抑えるためです。

PIはかなり暗めですが、徐々に上げていく作戦です。というのも、この後行うノイズ除去はあまり輝度が高すぎると上手くないような気がするからです(根拠はありませんが、経験上) 
 

 


ノイズ除去

PIは先に書いたとおりです。

SI7はますRGB分解してみます。するとGとBの画像の荒れが大きい事が分かります。

そこでこの2枚に適当にガウスぼかしをかけてから(Rはそのまま)、RGB合成します。

上:処理前
下:処理後

明らかに効果が見られます。ただ微光星が犠牲になっているのが気になります。 
 
  そこで、星マスクを作製し(とりあえずSI7の選択マスク作製でぱっと作ったマスクです)、これを使って上と同じ処理を行いました。
 
  上:マスク無しのぼかし
下:マスクを使ったぼかし

微妙ですが、微光星が保護されている感じがわかります。

 
 
 
SI7では附属のノイズ軽減を使わずにRGB分解+ガウス暈しをマスクで輝度の高い部分を保護して行いました。

色彩強調には、SI7ではLab色彩調整、PIではCTのSatirationを使いました。PIにはColorSaturationというプロセスもありますが、CCの色調をあまりいじらずに彩度のみを上げるにはCTのSaturationが向いています。

ブログに書きましたが色彩強調マスクは加減が難しいなどの理由で今回は使用しません。

 
 
SI7はかなり星が煩くなってしまいました。
そこで最後の輝度調整では星マスクとトーンカーブを使用して出来るだけ星雲の輝度を上げてみました。

PIでは本来トーンカーブでR、G、Bを個別にいじることはないのですが、今回は出来ますよというデモも兼ねて、輝度、R,G,Bそれぞれを調整しました。
 
最後の仕上げとして、SI7はスターシャープ、PIはMorphologicalTransformationのErosionを選択的に星だけに使い、若干星を小さくしました。

さらにSI7では背景が全体的に赤いので、R画像を反転しレンジを調整してマスク画像とし、背景をLab色彩調整で色を抜きました。PIはABEを使って背景を若干整えています。

両者とも背景の処理はPSを使った方が格段に良くなります。SIでは微光星小さくし色を保持したまま背景を処理できますし、PIでは暗部に多いBが飛びぬけたPixelsを輝度情報だけ残してグレーに処理できます。その辺は今回の対決とは関係ないので、まずはこの辺を完成にしたいと思います。
 
  左がSI7,右がPIの等倍画像です。

私の率直な感想は「SI7やるじゃないか!」です。

暗黒帯、ハイライト部分の階調、星の大きさ、微光星の色、細かく見ればPIが勝っていますが、それはPIを使い慣れているというアドバンテージもあると思います。

むしろ、7になってから始めての単独処理でここまで出来る使いやすさはSI7の長所でしょう。

 
    まとめ

今回、ステライメージ7だけを使った画像処理で、それなりに綺麗な画像を作る事が出来ました。単独でも工夫次第でなんとか仕上げる事が出来たので満足しました。

ただし前処理は全てPIのBPPを使用しているので、果たして本当の最初から処理をしたらどうなるのかは分かりません。

副産物としてFitsファイルのやり取りも補正すれば問題なく使える(色調が保証されないのは困りますが) 事も分かったので、これからはもっと積極的にSI7を使ってみようと思います。