PixInsihgt ColorCalibration

PixInsightの特徴的プロセスの1つ、ColorCalibrationについて自分なりに分かっていることを整理してみました。
あくまで実践的、経験的な結果で、理論的に裏付けられたものではありません。

PixInsightのトップに戻る

トップに戻る

   サンプル画像はSSProで撮影したカラーCCD画像の中心付近を切り出しました。
BackgroundNeutralization、
AutomatiocBackgroundExtractionはFunctionDegree=2
すべてのサンプルで同じ条件で行っています。
 例1  
最初のケースは限られた領域内ですが最も良いと思われるWhiteReferenceImageとBackgroundReferenceImageを指定し、StructureDetectionをチェックしました。
 
ColorCalibrationを行います。

背景部分はなるべくニュートラルグレーだけの領域、ホワイトバランスは領域内になるべく多くの色調が含まれしかも画像内の特徴的な領域を指定しました。

StructureDetectionをチェックすると、ホワイトバランスの調整に指定領域内の恒星が多い時に使用するようなことが書いてありますがはっきりとは分かりません。
 
STFが調整してくれたレンジでHistogramTransformationを行いノンリニアに圧縮します。
その後 SCNRでGチャンネルを66%でノイズ除去します。
最後にCurvesTransformationでSaturationを強調します。

これらの処理は、4つのサンプルで同じ設定で行っています。
 
CC直後には綺麗に見えましたが星雲は真っ赤で、中の微光星は赤っぽく変化がありません。 
 例2
 次は上と同じReferenceImageを指定しStructureDetectionをチェックしない場合です。

 
 CC直後にはかなり色彩が損なわれた感じがします。
 
SCNRで若干赤が出てきました。 
 
Saturationを強調してみると、星雲の色彩は上手く分離され、中の微光星の色も損なわれていません。 
 例3  
次はWhiteReferenceImageを非常に広く設定してみました。
StructureDetectionはチェックしていません。
 
 
 
 星雲、微光星の色調は悪くないですが、赤のしまりがない感じです。

BackgroundReferenceImageが小さすぎたので例2と同じくらいにとってみました。例2ではグレーになっている部分に若干赤みがあり、微光星も僅かに赤に偏っているような感じです。

WhiteReferenceImageに背景部分を含めて取り込むべきではないのでしょう。
 例4  
最後のサンプルでは、Imageを非常に小さな範囲、しかもWhiteReferenceImageはなるべく白い領域だけを選択しました。
StructureDetectionはチェックしていません。
 
 この状態では、それほど悪く見えませんが、
 
 星雲の色調が上手く表現できません。微光星もなんとなく赤いです。

CCではこれ以外にもRegion of Interestなどという領域指定もあります。たまに使っていますが果たしてどのように効果が出ているのかファクターが多すぎて良く分かりません。
  以上より
CCのReferenceImageの設定は非常に重要で、WhiteReferenceImageだからと言って白っぽい領域を探して設定すればよいのではない事が分かります。また、領域の広さもあまり狭くてはいけないことが分かります。

想像ですが、PixInsightはWhiteReferenceのReferenceImageに設定された領域内で最も色調が強調されるようにホワイトバランスを決めているのではないでしょうか。一般的にホワイトバランスを決めるというとサンプル領域が白になるようにRGBを調整するイメージがありますが、そのような処理ではないように思えます。

StructureDetectionはチェックすると微光星の色が損なわれる気がします。どのような場合に有効なのか良く分かりません。

BNとABEの順序、BNとCCでBackGroundReferenceImageを同じにすべきかどうか、この2点はまだ良く分かりません。ただImage領域はなるべくニュートラルグレーに近い領域を選んでBNを行ってからABEをした方がすっきりするような気がします。元画像でカブリの強い領域をImageに設定するとABEが部分的に過補正になるような感じがする事もあるので、そういう状況ではABEを先に行ってからBNをすべきかもしれません。
 解説  
2012.10.4

PixInsightを理解しました。人に物を説明すると自分の理解が深まります。断片的に分かってモヤモヤしていた部分がすっきりしました。

私なりにPixInsightの処理の流れを解説する自信がつきました。これから解説する内容はステライメージでは実現困難な部分もありますがフォトショップならほとんど同じことができます。ただしフォトショップはFits形式に対応していないんですよね・・・。やはりPixInsightの簡便性と優位性は変わりません。
 
まずカラーCCD画像を読み込んだ状態です。基本的な補正とコンポジットは終わっています。 

注目すべきは左のヒストグラムです。幅とピークの位置・高さに着目します。ステライメージはヒストグラム表示でピークを見れませんよね。
 
 今回はABEを先に行いました。ABEは画像のカブリと根本的な色のズレを解消してくれます。
ヒストグラムは最初の状態よりピークが互いに寄っています。
 
 次にBNを行います。ReferenceImageはPreview01です。
このヒストグラムは画像全体を計算していますがヒストグラムのピークが綺麗に揃いました。Preview01を元にBNは計算されるので、Preview01が比較的良好なサンプルだったのでしょう。
 
 続いてCCを行います。Preview02を星雲の中央部分で色彩的に注目したい領域に指定します。

ヒストグラムはGBがぴったり揃い、Rはヒストグラムの幅、ピークの高さ共にずれています。これは画像全体のヒストグラムなので、Preview02に着目してCCを行うと画像全体は揃わない事を意味しています。
 
そこで、Preview02をかなり大きくしてみます。

CC実行後のヒストグラムは先ほどよりRGBが綺麗に揃っていることが分かります。つまり広い部分をサンプルとして計算したので画像全体の色調が整ったと考えられるでしょう。

これではせっかくのCCが全体のホワイトバランスになってしまいます。注目すべき点で揃えるという考え方こそがPixInsightの制作チームが熱く?語っている部分です。 
   
カラー情報をヒストグラムで調整するとき「ヒストグラムの左端を揃える」というのは基本でしょう。さらに赤い星雲ならRの右側に注意して右を整えます。ステライメージではここまでではないですか?
ピークの位置や高さはどうなっているでしょう?これを調整するためにはトーンカーブを使います。しかしピークが表示されないステライメージには限界があるでしょう。フォトショップでは頑張れば調整可能ですが、かなり熟練を要しますし面倒くさいです。実の所PixInsightでもCCを使わないと面倒臭いです。
   ヒストグラムのピークの位置や高さに意味があるの?左端が揃えばホワイトバランスは完璧じゃないの?と思っている方!ヒストグラムが意味するものを考えてみましょう。

ヒストグラムの解釈は言葉にすると非常にわかりづらいです。間違った表現もあったので分かりやすく書き直しました。

例えばヒストグラムで幅がRGB全て揃っていれば特殊な状況でない限り背景はニュートラルグレーに近づきます。しかし、例えば、幅が揃っているにもかかわらずBだけピークが右に寄っていたとしたら(左斜面が緩やかと同義です)どうでしょう?これは明るいBのピクセルが少ないということです。つまり明るい部分は青の情報が少ないことを意味しています。
※大抵の星雲画像でヒストグラムのピークの辺りは背景レベルのピクセルの集まりです。
それで、背景をニュートラルグレーにする=ヒストグラムのピークを揃えるという考え方が一般的です。
これはヒストグラムの左端を揃えると同じに考えている方もいるでしょう。

ではピークの高さと山の形です。
ピークが高いということは(両斜面が急と同義です)情報が背景付近に集中していて星雲の描写に使えるデータが乏しい可能性があります。あるいは非常にノイズの少ない良好なデータとも考えられます(全く逆ですがヒストグラムの形を見ただけでは判断できません)。逆にピークが低いということは、ピークより右が緩やかな傾斜なら星雲の青情報が豊富、あるいは明るいカブリ、左が緩やかなら背景レベルの情報が多いことになり、背景を整えるのが難しくなります。

よく、天体写真のデータのヒストグラムとしてはピークの左側が切り立っていて、右側がなだらかな方が有効な情報が豊富と言われていますね。

難しいですよね。書いていても、あれ?逆だっけ?とか迷ってしまいます。

この事を意識して画像処理をやっている方の作品は非常に素晴らしい色彩を表現しているのです。PixInsightでは誰でもCCのWhiteReferenceImageを適当な所に指定するだけで一瞬でその場所の最適化されたヒストグラムが手に入ります。星の色、星雲の微細な色彩変化、画像内に埋もれている色彩情報を100%引き出すことが誰にでも出来るのです。

分かってみると、今更ながらに凄い事です。自分が嵌った理由が良く分かりました。
 実践  
では実際にヒストグラムを見ながら通常の処理とCCを比較してみます。
 

一般的なLRGB合成ではまずRGB合成する時点でバランスを整えます。

左はRGB合成を終わった状態です。フィルターの係数を入れて合成しましたが緑が強いです。「透明度が悪かったからなー」とか言いながら処理を進めることになりますね。

一般的な処理で進む場合、ヒストグラムの左端もしくはピークを揃えて背景を整えると、上で書きました。 

この場合左端を揃えても背景は緑です。ピークの位置はそれほどずれていませんから高さを調整することになります。

「あれ、おかしいなー、でも俺の腕を持ってすればこれくらい・・・」って感じでしょうか。
 

高さを揃えると、先ほどよりは良くなりましたが何となく背景は赤っぽい感じがします。そしてなにより星雲部分が緑色ですっきりしません。

ここからが、画像処理の腕の見せどころ!ですか? 

そもそも、どうやって高さを揃えるかって?それはトーンカーブを神業的に微妙に調整するのです。

手始めにステライメージでLab補正?それともフォトショップでマスクを使って星雲の色調を作っていきますか?

長い道のりになりそうですね・・・
   
では、PixInsightでの基本的な流れに沿って処理するとどうなるでしょう。
 


RGB合成は1:1:1で行います。私の場合、MaxImDLを使っているのでStackでRGB合成まで一発です。
星の色がずれるときはPixInsightでアライメントをやってRGB合成になりますが、大した手間ではありません。

推奨される手順に沿ってABE, BNを通法通り行い、その後左の条件でCCを実行した状態です。

面倒なヒストグラム合わせもトーンカーブの微妙な調整も全く行う必要がないのです。 
 
若干色彩強調してみると、星雲内の色調は緑がかった感じもなく、すっきりしています。特に処理をしたわけではありませんがHα領域もはっきり浮き出ています。 
 

100%中心部
その後、PixInsightのプロセスを使って仕上げていくと20分もかからずに、このような画像になります。色彩に関しては強調処理とノイズ処理、それに伴うピーク位置の修正以外は行っていないので、ほぼCCが作り出したカラーバランスのままです。

フォトショップは全く使っていないので若干ピンボケしているのがバレますね・・・ 

これはDeconvolutionしかない!背景に悪い影響を出さない程度でしかも効果のあるDeconvolutionというのは難しいです。

※2012.10.9 これは間違いです。
DeconvolutionはLinearのデータで行わなければなりません。どこで勘違いしたのかSTf後にDynamicPSFをして「何で過補正になるんだろう?」とずいぶん悩んでImageを切り詰めたりレイヤーを増やしたり(当然そうなりますね)悪戦苦闘してました。
DynamicPSFで星像分析をして、あとは背景を荒らさない程度にちょっとだけDeconvolutionを使いました。問題は範囲ですね。結構効果あります。ほんのちょっとが良いんですね、こういうのは。
※2012.10.9リニアのデータ上ならDynamicPSFの結果をそのまま使ってあっさり処理できると思います。ノンリニアにしてからでは恐ろしく繊細な調整が必要になるでしょう。それに効果もスッキリしないはずです。

フォトショップで仕上げるとこんな感じになります。
ちょっとはブチブチ感が出てきたので、トリミングしてみました。Hα領域の構造などはVC200Lで撮影した時には全く及ばないのですが、何となく解像されているような雰囲気に仕上げました。 

PixInsightでなければM33の構造をここまで色彩豊かに仕上げるのは、かなり大変です。もちろん出来るのですが、私程度の技術力では、運と根性に左右される部分も多いと思います。